*信長誕生* ●(語り部)時は1534(天文3)年の夏… 古渡城で1人の男児が産声を上げた 父は織田信秀、 母は信秀の正室・土田御前である ●(林秀貞)殿、男子の誕生 まことに祝着至極に存じまする ●(平手政秀)家臣一同を代表して 祝賀を申し上げます ●(織田信秀)うむ、大儀である 信広は長子とはいえ側室の子 我が織田家の跡取りは この子になるであろう おぬしらに傅役を申しつける 織田家の後継たる器に育てあげよ ほかにも青山与三右衛門と 内藤勝介をつけようぞ ●(平手政秀)ははっ! しかと承りました この政秀、一命に代えましても 和子様にお尽くし申し上げまする ●(林秀貞)殿 ところで和子様のお名前を まだ伺っておりませぬが… ●(織田信秀)おう! そういえばそうであったな この子の名前は…吉法師! 織田吉法師じゃ!! ●(平手政秀)吉法師様でございますか まことに良き名前と存じます それにしても元気な泣き声でございますな きっとたくましい若者に育ちましょうぞ ●(織田信秀)はっはっは そうだと良いがのう ●(語り部)この、吉法師と名付けられた男児こそが のちに戦乱の世を 終息へと導くこととなる 織田信長である… *鉄砲伝来* ●(語り部)時は1543(天文12)年の秋… 大隅国種子島に1隻の南蛮船が漂着した 船の中から現れた紅毛碧眼の男は 黒い棒を携えていたという… ●(南蛮商人)お初にお目にかかります 私はぽるとがるの商人で アントニオ=ダ=モタと申します ●(種子島時堯)ほう、そちはぽるとがるの商人であるか ところで先ほどから気になっていたのだが そちが持つその黒い棒はなんなのじゃ 見たことのない代物だが… ●(南蛮商人)黒い棒…? ああ、これは「鉄砲」と申しまして 武器の一種にございます この様に遠くのものを撃つのです ●(種子島時堯)おお…! これは素晴らしい 是非とも譲ってほしい いかがでござろう? ●(南蛮商人)わかりました 助けていただいたお礼として 2挺ほど、差し上げましょう ●(語り部)轟音とともに火を吹き 遠くの物を破壊する黒い棒「鉄砲」 威力は瞬く間に全国に知れわたり 以後、合戦に欠かせぬ武器となっていく… *信長元服* ●(語り部)時は1546(天文15)年の春… 古渡城主・織田信秀は 嫡男・吉法師を自室に呼んだ ●(織田信長)オヤジ殿 わしに用事とは いったいなんでござるか ●(織田信秀)うむ… そちも元服してよい歳になった 10日後に元服の儀式を行うゆえ 重々承知しておけ ●(織田信長)わしは儀式は嫌いじゃ 儀式は年寄りたちに任せておけば よいではござらぬか ●(織田信秀)たわけたことを申すでない 男子にとって最も大事な儀式であるぞ 元服を済ませて、初めて 世間から一人前として認められるのじゃ ●(織田信長)そうか、ならば仕方ない ただし1つだけ条件がある 聞いてくださるか ●(織田信秀)なんじゃ 申してみよ ●(織田信長)元服してから名乗る名前じゃが 「信長」と名乗りたいのじゃ ●(織田信秀)ほう… その訳は? ●(織田信長)町を歩いておると 素浪人が名乗りについて講釈をたれておった なんでも「信長」という名は 天下取りになれる名だそうじゃ ●(織田信秀)わっはっはっは… これは面白い よかろう、その名乗り許してしんぜよう それゆえ元服の儀式には必ず出るのじゃぞ ●(語り部)こうして吉法師は 元服の儀式を済ませ 「織田信長」と 名を改めたのである… *キリスト教伝来* ●(語り部)時は1549(天文18)年の秋… 薩摩国鹿児島に1人の南蛮人が上陸した まんとを身につけたその男は 『聖書』という書物を手にしていたという… ●(島津忠良)そちはいったい何者であるか 見たことのない服装をしておるが… ●(フランシスコザビエル)私はいえずす会の宣教師で フランシスコ=ザビエルと申します じぱんぐの人々にでうす様の教えを 広めるためにやって参りました… ●(島津忠良)ほう…でうすの教えとな… 神や仏の教えとはまた違った 面白い趣があるな よかろう、布教を許してしんぜよう ●(フランシスコザビエル)ありがとうございます お心遣い、深く感謝いたします… ●(語り部)イエズス会宣教師・フランシスコ=ザビエル がもたらした異国の教義は西国を中心に 急速に浸透し、同時に、様々な西洋の文物を 瞬く間に全国に広めていったという… *桶狭間合戦* ●(語り部)かねてより「上洛を果たし天下に号令する」 という野望を抱いていた今川義元が ついに4万の軍勢を率いて 居城・駿府館を出発した… ●(織田信長)皆も聞いたと思うが義元の軍勢が この清洲城目指して進軍中じゃ 義元に勝つには どうしたらよいか、おのおのの存念を申せ ●(柴田勝家)殿に申し上げます 敵の軍勢は4万、こちらは4千… 野において戦うのは不利と心得ます 城に籠もって戦うが上策かと… ●(織田信長)そうか ほかの者はどうじゃ? …皆、勝家と同じ意見か 皆の存念はよくわかった 今日は下がって休むがよい わしも寝ることにするぞ ●(柴田勝家)殿! お待ちくだされ まだ軍議の結論が出ておりませぬ 殿のご意見を伺わないことには それがしどもはこの場を去れませぬ ●(織田信長)…くどい! わしの存念はもう決まっておる あせっても仕方あるまい ではわしは寝るぞ、皆もよく休んでおけ ●(柴田勝家)…なんということだ 殿はどういうおつもりか すでに匙を投げられたか もはや織田家もここまで… ●(語り部)その日の夜のこと… ●(木下秀吉)申し上げます! 今川義元の軍勢が 丸根砦に攻めかかったとの 報告が入りました ●(織田信長)…人間五十年 下天のうちをくらぶれば 夢幻のごとくなり… 一たび生を受け、滅せぬ者のあるべきか… …具足を持てえっ、出陣じゃあっ! 行き先は熱田の社じゃ! 続けえっ!! ●(木下秀吉)ははあっ! 皆の者! 出陣じゃ! 御大将が出陣されたぞ!! ●(柴田勝家)な、なにっ!? 殿がご出陣!? それで行き先は! …熱田神宮!? …わかった、すぐに参る 皆の者、殿に続けいっ!! ●(語り部)主従わずか5騎で清洲城を 飛び出した信長は 熱田神宮に到着すると 直ちに用意してあった願文を捧げた… ●(織田信長)今川義元の野望を阻止せんと 織田信長、今ここに 出陣するものなり… 我らが義挙、とくとご覧あれ… むっ! 者どもよく聞け!! 祠の奥より金音が聞こえたぞ! 熱田の神も我らの味方じゃ!! ●(柴田勝家)おおーっ!! ●(織田信長)これより義元を討ちに参る! 皆の者! 命をわしに預けよ! 遅れて、末代まで恥を残すな! ●(語り部)信長は義元の軍勢目指して まっしぐらに駆け始めたが 丸根、鷲津砦が落ちたとの報告が入り 進退きわまった… ●(織田信長)義元の本陣はどこだ… もはや敵も近いはず このままでは… ●(柴田勝家)殿 物見が戻って参ったようでございます ●(織田信長)おお、広正か! どうじゃ 義元の居所はつかめたか ●(簗田広正)はは! 義元めはただ今 田楽狭間において 幔幕を張り巡らして 休息をとっている由にございます ●(織田信長)おお! そうか 皆の者! 義元は自ら好んで死地に赴いたぞ 目指すは田楽狭間じゃ! 続けいっ! ●(語り部)いつしか雨が降り出していた 織田軍が田楽狭間に着いてみると 義元軍の兵士は皆 酒宴の真っ最中であった… ●(織田信長)…我、勝てり! …よいか皆の者! 狙うは義元の首ただ1つ ほかは討ち捨てにせよ! 行くぞ!! ●(今川義元)…なんの騒ぎじゃ? さては足軽どもが酒に酔って 喧嘩でも始めたか… 不粋な…誰か止めい ん? ん!? な、なんじゃ、なんじゃ!? …ぐわっ! だ、誰じゃ貴様は! ●(服部小平太)服部小平太! 義元殿、覚悟! ●(今川義元)くぬっ、下郎め! これでも食らえ!! ●(服部小平太)うぐっ! ●(毛利新助)小平太、助太刀に参った! 義元殿、覚悟めされい! ●(今川義元)…ぐふっ! …き…貴様ら… 誰の…手の者だ… ●(毛利新助)織田の上総が手の者 毛利新助秀高なり! 義元殿、御首頂戴! ●(今川義元)ぐわっ!… こ、こんなところで… …死ぬの…か… ●(毛利新助)今川義元殿の御首 毛利新助秀高が頂戴仕ったあっ!! ●(織田信長)でかした新助!! 皆の者! 勝ちどきをあげろ!! ●(柴田勝家)えい、えい! ●(木下秀吉)おおーっ!! ●(語り部)こうして信長は絶妙な奇襲によって 今川義元を討ち取った この勝利により織田信長の名は 瞬く間に全国に広まっていった